常用時、太陽時、恒星時 – 3 つの時間のワルツ

最高峰の時計技術が集約されたこのユニークピースは、数多くの天文コンプリケーションが信じがたいほどわずかなスペースに組み込まれ、そこには膨大な知識と計算、微妙な調整が表現されている。その魅力的な機能の中でまず注目される特徴的な機能は、常用時、太陽時、恒星時という3 つの時間表示。これらは、個々に独立した輪列で作動し、太陽に関わる全機能を司る“回帰”輪列も含まれる。
「常用時」(標準時)は、先端に丸く抜いたモチーフを配した2 本のホワイトゴールド製の針により、表の文字盤で従来の時計と同じように読み取る。常用時とは、太陽は1 年を通じて一定の速度で赤道の周りを移動し、24 時間毎に1 周すると均等に定めた一種の仮定の理論に基づく「平均太陽時」と普通は理解されている。このような便利で伝統的な原理では、1 年は365.25 日に、1 日は24 時間に、1 時間は60 分にそれぞれ分割される。

常用時に対して実際の「太陽時」(真太陽時)は、1 日を通じて太陽の目視可能な軌道に基づいており、所定の場所と時間で計測された時角によって表される。1 年の日によってこの「真太陽時」と「平均太陽時」との間に最大+14 分から-16 分までの差が生じ、両者が一致するのは1 年で4 回だけ。このような不一致が起こるのは、地球が周回する公転軌道が円ではなく楕円をしていて、太陽もその軌道の中心には位置していなく、さらに地球が軌道を移動する速度も一定ではなく、地球の自転軸も周回軌道面に対して傾いているという事実による。

星空を仰ぎ見て

3 番目の「恒星時」は、この時計の裏面で読み取る。恒星時とは、理論的には、地方子午線から観察された恒星の見かけの動きに対して計測される地球の自転に基づく天文学的な時間スケールと見なされている。恒星時と平均太陽時(常用時)との差は1 日で約4 分あり、恒星時での24 時間は、平均太陽時の23 時間56 分4秒に相当する。この時計の恒星時の時と分は、2 枚のサファイアクリスタルを重ね合わせた独創的で巧妙な方法で表示され、下のサファイアクリスタルは天球を描いた背景を成し、恒星時のミニッツトラックと基本方位が配されている。上に置かれたほうのサファイアクリスタルには、星座や天体の赤道(白い楕円)と黄道(赤い楕円)が描かれ、黄道は地球から見た太陽の年間の通り道を示している。このランベルト投影法による図は、北半球における星座に対応する、真正の科学的な地図である。

回帰輪列による連続作動均時差表示

「常用時」と「太陽時」の差を計測して表示するために、この時計には複雑で巧妙な「均時差」機構が装備されている。しかも均時差表示は、腕時計ではめったに見られない「連続作動」というタイプで、カットアウトした太陽のモチーフで飾ったピンクゴールドの分針が常用時の針と同軸に据えられ、それと常用時の時針によって太陽時が常に同時に示される仕組みになっている。一般的な均時差表示では、+14 から-16 分の目盛りを配した補助的なセクターを移動する針で示され、太陽時を確認するには頭で少々計算する必要がある。この連続作動均時差表示の場合、製作は一段と複雑になるが、太陽時と常用時が一目で判読できる。ヴァシュロン・コンスタンタンはその正確さや精度を確保するために、地球が太陽の周りを完全に一周するのにかかる時間で、365.2421898 日に相当する“回帰年”をシミュレートした回帰輪列にその調整を託した。